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自分に見合う仕事を求めて彷徨う ~とにかく寝かせてくれ~

前回の話はこちら。

鉄道業界を退職して鉄道業界へ再就職するのは難しい?

 

転職活動を始めるにあたり相談に乗って頂いたエージェントとの面談を経て、自分が無能であることを実感したのが前回までの話です。

 

そして他の鉄道会社への転職も現実的には厳しく、自分ももう鉄道の仕事はやりたくないと思っていましたので、持っている資格やスキルを活かせる業界への転職は最初から閉ざされていました。

 

私はふと気づきます。

 

 

私は結局転職して何を得たいのだろうか?

 

 

自分が最も憧れていた仕事をやっているにもかかわらず、その世界を抜けようとしているわけです。

 

つまり、新しい仕事に憧れとか、やりがいを求めてもそれは実現出来ない可能性が高いことはよく分かっていました。

 

どこの業界で働きたいとか、どんな仕事をしたいとか、そういう願望も芽生えてくることはなく、運転士を始めた頃のようなやる気に満ちた状態で新しい仕事に就けるとはとても思えませんでした。

 

メンタルもネガティブな方に傾いていた私は、結局プラス方向で考えても答えが出ることはありませんでした。

 

 

では逆に考えるとして、何故今の会社を辞めたいのか?

 

それは以前の記事で色々理由を書きましたが、最も緊急性が高かったのは『身体が持たないから』でした。

 

その中でも全ての負のスパイラルの元凶となっているのは明らかに『睡眠不足』です。

 

睡眠が足りないと疲労は蓄積し、ストレスも溜まりやすくなり、判断力も低下します。

 

それが慢性的に続けば毎日が時差ボケのような状態となり、休日も起きたばかりなのに眠いというよく分からない状態となっていきます。

 

そして些細なことでイライラしたり、失敗したりするし、身体も悪くなっていくしで、人生がどんどん悪い方へ向かい始めます。

 

 

この負のスパイラルを断ち切るには、どんな仕事でもいいから睡眠不足には絶対にならない生活が必要だと思いました。

 

 

つまり、私が転職して何を得たいかという質問に戻れば、結論はこうなります。

 

 

『毎日8時間寝られる仕事。以上。』

 

 

これだけだったのです。

 

要するに、人間らしく生きることが出来るのであれば、仕事は何でもいいというのがこのときの私の答えでした。攻めではなく、完全に逃げの転職です。

 

 

この答えが見付かったのをきっかけに、私は日々の会社での仕事をこなしながら、空き時間を見付けてはネットで転職情報を漁るようになりました。

 

手始めに転職サイトへ行き、条件を入力して検索結果に残った仕事を一つずつみていくという行動に出ます。

 

当時、転職サイトで私が指定した条件は以下のようなものだったと記憶しております。

 

エリア・・・静岡県

年間休日・・・120日以上

 

たったこれだけでした。

 

しっかり休暇を取ることが出来れば、多少の疲れはしっかり癒やせます。

 

そして給料が安かったとしても、県内であれば実家から通うことができ、家賃が掛からないので生活費を抑えてやりくりすることが出来ます。

 

職種も限定せず、これだけの条件であればそこそこ選択肢もあるだろうと思っていました。

 

 

しかし、現実はそんなに甘くありませんでした。

 

 

驚くことに、これだけの条件であっても、満たす仕事は全体の10%にも満たなかったのです。

 

当時の記憶では静岡県全体で1000件以上の求人が確認出来たと思います。

 

それが、年間休日120日以上という条件を入れただけで、なんと残ったのは30件あまりでした。

 

私は驚愕しました。

 

 

年間52週、完全週休2日であれば104日となるわけですが、これにGW、お盆、年末年始に各5日程度あれば単純計算で119日となります。

 

この程度の条件であっても、満たせる仕事はここまで少ないのです。

 

日本で働くという選択をしている時点で、何処へ行っても酷使されることが確定なのではないか?と疑いたくなりました。

 

JR貨物の年間休日数は公には108日前後となっていました。

 

この中でも特に運転士の仕事は休みが少なく、月7日が基本となっていました。この場合、単純計算で年間84日しかないこととなります。そこに三大連休に各5日間休みの追加があったとしても、やっと年間99日です。

 

実際のところ、三大連休の期間も5日間取れれば良い方で、合計5日以上あった場合でも、4+1とか、2+3とか、細切れの連休になることが多かったように思います。まとまった時間を取って身体を休めるということは本当に難しい仕事でした。

 

体感では年間100日を切っているのではないかと感じていましたが、こうして実際に計算してみるとほぼ体感通りで、身体は正直だったのだと感じています。

 

 

そんな状況だった私ですから、何度も綴ってきましたがとにかく睡眠と休暇に飢えていました。

 

なので、年間休日数120日以上という条件だけは譲らないことに決めて、それさえ満たしてもらえるならどんな仕事でもいいと割り切ろうと思うようになりました。

 

勤務実態などは求人票からだけでは読み取れない部分が多いので、朝出てきて夕方帰れる仕事に就けるかは分かりません。

 

ですが、仮に夜勤仕事になったとしても、夜勤には夜勤なりの生活リズムがあり、貨物の運転士のように毎日生活サイクルがバラバラなどということにはまずならないと、確信に近いものがありました。

 

こうして条件を絞った私は、自分に見合う仕事を求めて日々転職先を漁るようになったのでした。

 

次回は転職情報を漁った結果、実際に行動に移ったケースについてお話したいと思います。

 

この話の続きはこちら。

上手くいかない転職活動 ~お祈りメールの洗礼~

会社を辞めるまでの話を最初から読まれる場合はこちらからどうぞ。

一生働くつもりで入った会社を辞めるまで① ~時限爆弾が爆発する~

 

ストーリーを最初から読まれる場合はこちらからどうぞ。

鉄道会社で働くことへの憧れ ~将来の夢にどんな絵を描いたか?~

 

自分に見合う仕事を求めて彷徨う ~とにかく寝かせてくれ~」に6件のコメントがあります

  1. 今回も大変興味深い記事でした

    なりたかった仕事についたもののよその業界ではまるで通用しない絶望感、諦めは想像を絶するものだったのではないでしょうか。貨物を時間内に、正確に、睡眠不足の中、運転するのはさぞ過酷な勤務だったのではないでしょうか。ましてや東海千房。それがよそではいらないスキル、むしろ邪魔な経験とあしらわれるのは苦痛と存在の否定だと思われます。

    次回作もお待ちしています

    1. >西日本さん

      お読み頂きありがとうございました。

      昭和の時代のように、一つの仕事を極め、生涯それを勤め上げれば報われる時代であれば、鉄道員というのは良い仕事だったと思います。

      しかし、もはや現在はそのような時代ではありません。合理化が進められ、一人あたりの人間に求められる仕事と背負う責任は増す一方、待遇面ではどんどん削られていくのが事実で、そんな世界で生涯やり遂げるなどとても考えられないのが現状でした。

      睡眠不足が続くと、正常な状態なら難なく出来ることも難しいことになります。些細なことを忘れたりミスしたりするし、そういう小さいエラーは運転中に何度も起こります。それが公になって問題になることのないよう、ギリギリのところでカバーしているというのが貨物の運転士の現実だと感じております。

      相応の努力をして養成を受け、やっとの思いで就けた運転士の仕事も過酷で、かといってひとたび辞めてしまえばクソの役にも立たない資格。その現実を突きつけられた時は本当に凹みました。

  2. 個人的にはもう一度他の鉄道なら入りたいかの記事が読んでみたいですね。

    JR東海などの旅客鉄道や京急などの大手私鉄、樽見鉄道などの地方私鉄、広島高速交通などの第三セクターなど

    1. >西日本さん

      ありがとうございます。

      記事にするほどの内容で書ける気はしませんが、私個人としては、どの会社かなどは関係なく、もう鉄道の仕事は二度とやりたくありません。

      それはどの鉄道会社でも共通している労働環境があるからです。

      ・人間本来の生活リズムに反した勤務体系。
      ・一年中休みなく動き続け、しっかり休める機会が少ない。
      ・現場では兵隊さんのように言われたことだけをきちんとこなす仕事ぶりを求められること。

      個人的にはこの辺りがもう堪えられないと思います。

      睡眠不足で身体もやられてしまいましたし、現在のように人間味の溢れるコミュニティで生活してしまうと、個性や想像力といった、人間らしい側面を捨てないと出来ない仕事に就くことは苦痛でしかありません。

      上記理由であくまで私には向いていませんが、仕事を仕事として割り切って、社会的・金銭的安定を求めている人には向いていると思います。

  3. こんにちは。
    私は某大手私鉄から某大手私鉄へ転職した者です。

    確かに鉄道会社間での転職者は少ないですが時々います。ある人はJR旅客会社〜大手〜JR旅客会社という経歴の人もいますし、同僚で大手からJR旅客会社へ行った人も何人もいました。

    ただそういう例が少ないのは、既に大手私鉄で働いているので特に不自由がない、今よりいい条件で働ける場所が限られている、という理由でしょう。

    年間休日に関しては事務やデスクワーク以外で年末年始やGWに普段とは別に休日を設けている職種は限られているでしょう。

    私は新卒から3社経験(異業種含め)しましたが普段の休日とは別に年末年始やGWに休日を設けている仕事に就いたことは1度もありません。

    ただその代わり有給休暇は取りやすいので、11月などあまり人が休まない平日に年休をとって長期で旅行したりしています。それでなんの不自由もありませんでした。
    貴ブログ主様のこの時の転職活動のネックはそこが1番大きいのではないかと思われます。休日は年休で対処できます。長い拘束時間がきつい場合は日勤主体の会社もあります(乗務員でも)。

    鉄道会社といえども別の鉄道会社に転職する場合エントリーから落とされるようなことはまずないです。応募には未経験者歓迎となっていてもやはり20後半とか30過ぎで中途採用なら全く未経験というよりかは即戦力ということを採用側も意識しますから。

    また鉄道の経験は他へは役に立たないと言いますが、それは他の業種でも同じです。美容師の資格があっても美容師以外の仕事で役に立ちません。事務10年やっていてもパソコンでブラインドタッチすらできない人もいます。

    仕事のスキルというのはどこの職種でもベースになっている部分というのがあります。チームワークができるか、報告連絡相談がきっちりできているか(勝手な行動をしないか)、ミスがないよう確認を怠らずできているか、普段と違う作業のときに臨機応変に対処できるか⋯etc

    鉄道だけが取り立てて他で通用しない、ということはありません。駅員やってる人なら金銭管理はお手のものですから販売にも役に立ちますし、車掌なら客商売ですから接客業でも通じるところはあります。

    未来は明るいです。

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