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終わらない揉め事 ~そんな話は聞いていない~

前回までの話はこちら↓

JR貨物 退職の日を決める ~アルバイトの方が好条件?~

 

退職日を決定し、課長から退職願をもらうタイミングで、課長が転勤で入れ替わることとなり、私は再び話をする必要がありました。

 

退職の3ヶ月前くらいまでに書類を出せば充分余裕はあるだろうと考え、課長が転勤してきた6月中に、落ち着いたタイミングを伺って声を掛けようと思いました。

 

そしてある日、課長の席を覗くとあまり忙しい感じではなかったので、声をかけに行きました。

 

私「失礼します。課長、こんにちは。ちょっと二人でお話ししたいことがあるのですが。」

 

課長「はい?ああ・・・じゃああっちで話そう。」

 

課長は私の表情から何かを察してくれたのか、指導員や助役に聞かれないよう、別の部屋に案内してくれました。そこは毎月運転士が訓練を行っている訓練室でした。

 

そして席に着き、名札を覗き込んで課長は聞きました。

 

課長「加納くん・・・だね?まだ社員の名前もちゃんと覚えていなくてね。今日はどうしましたか?」

 

私「着任早々のお忙しい時期にすみません。前任の課長に伺ってると思うのですが、9月一杯をもって退職することにいたしまして、今日は退職願を受理して頂きたいと思いお持ちしました。」

 

課長「ええええええええっ!!?そんなん聞いてないよ!!そんな話になってたの!!?」

 

私「え?前の課長は引き継いでおくって仰っていましたが、何も聞かれていないのですか?」

 

課長「そんな話は何も聞いてないよ。びっくりしたぁ~!」

 

どうやら私が退職することは何も引き継がれていないようでした。まだ退職願を渡したわけではありませんから書類もないですし、口頭で伝え忘れていればそれは初耳になるでしょう。

 

相変わらずこの会社は・・・と思いましたが、前任の課長もかなり精神的に追い込まれていた印象でしたから、他のことに気を回す余裕が無くても仕方ないと思いました。

 

 

事実を伝えて書類を渡して終わりと思っていましたが、ここで再び揉め事に発展しようとは思ってもみませんでした。

 

私「規程では1ヶ月前ですけど、一応3ヶ月前くらいを目処に提出した方がいいかなと思いましたので。」

 

課長「いや・・・もう決めちゃったの?もう少し考えた方がいいんじゃないの?」

 

私「いいえ、もうそれは前任の課長の時に話し合って決めたことですので、退職することは決めた上でお持ちしています。」

 

課長「じゃあ次の仕事はもう決まってるの?」

 

私「はい、知人がリサイクル業を経営していて、そこで使って頂くことになりました。」

 

課長「リサイクル業って、それどっかの会社の正社員?」

 

私「いいえ、ただのアルバイトです。」

 

課長「それはもったいないなぁ、そこまでして何で辞めるのさ?」

 

私「今年に入ってから体調を崩しがちになって、もう運転士の仕事に限界を感じてるんです。一度は転勤先を用意してもらえないか部長にも相談したんですが、オマエに用意する職場は無いって言われたので辞めることにしました。」

 

課長「それは甘い考えだなぁ。その程度で辞めるようじゃ他の業界でやっていくのも正直厳しいんじゃないの?」

 

私「課長は退職に至るまでの経緯を全くご覧になっていませんよね?どうしてそんな言い方が出来るんですか?僕なりに他の道もしっかり模索した結果こうして決断してるんですよ。何も知らないあなたに甘いなどと言われるのは心外です。」

 

課長「だからって一回部長に断られたから辞めるのは短絡的なんじゃない?真面目に仕事してればそのうち会社だって考えてくれるだろうに。」

 

私「そうしてもらえたなら退職は決意していませんよ。私は睡眠時無呼吸症候群に掛かってたんですけど、自腹で高いお金払って検査して、改善して治療を終えられることを証明する診断書まで貰ってきたのに、それを提出して乗務で治療器具携帯の義務を外してもらえるようお願いしてからもう1年以上放置されてるんですよ。この会社の『そのうち』って何年後になるんですかね?とても待てませんよ。」

 

私「それにただのアルバイトじゃなくて、そこでノウハウを学ばせてもらって、1年後には起業するつもりで転職するんです。ただ楽なアルバイトに逃げたわけではありません。」

 

課長「・・・そういうことだったら・・・まあ、分かりました。なんか色々大変だったんだね。」

 

私「はい・・・それで最後に部長にもお話しする時間を取って頂きたいのですが、部長とのアポを取って頂くことは出来ますか?」

 

再び当時の論争を思い出して後味の悪い空気となり、退職願を出したことを改めてよかったと思いました。

 

このタイミングで課長が替わることもまた、私の運の無さゆえなのかもしれませんが。

 

 

こうして残るは部長面談のみとなりました。

 

もう辞めることは決めていたので、部長に頼むこともないし、今度は気楽に構えることが出来ました。

 

 

そして数日後、新任の課長も同席の上、部長との最後の面談を迎えました。

 

私「今日はお時間を取って頂きありがとうございます。」

 

部長「なに、辞めるんだって?」

 

私「はい、色々考えましたが、会社に甘えずに違う世界で生きていく決心が出来ました。これもあの時厳しく言って下さった部長のおかげです。今ではとても感謝しております。」

 

部長「・・・ふーん、そうか。」

 

部長「退職願なんか持ってきてまた甘いこと言い出しとるから、もう一回言ってやらなきゃなと思っとったけど、そういうことだったらいいわ、頑張ったらいい。」

 

私「ありがとうございます。次の仕事でも頑張ります。今日までお世話になりました。」

 

数々の揉め事と経験して、私も分かりました。前回部長と面談したとき、プライドを傷つけられるとキレる人であることが分かったので、退職願を早々に受理してもらうためには、心にもない事だったととしても私はあくまで下っ端の雑魚という立場を取って、相手を持ち上げた方がいいだろうと思いました。

 

その作戦は上手くいきました。今回の面談ははこのような感じで揉めることもなく、後腐れなくスムーズに終わりました。

 

同席してくれた新任の課長は、部長の素っ気ない対応に何か突っ込みたそうな顔をしていましたが、同時に過去に色々あったことを察してくれている印象でした。

 

 

これで退職願の提出も完了し、あとは退職までの仕事をきっちり全うするだけとなりました。

 

3ヶ月前に提出して、年休消化の時期も考えると運転士として仕事をするのはあと1ヶ月半程度でしょう。

 

もう二度とハンドルを握ることはないのですから、一回一回の乗務を大切にして、しっかり人生の記録として刻んでおこうと思いました。

 

 

次回は最後の乗務までの話を書いていきたいと思います。

 

 

この話の続きはこちら。

最後の乗務までの日々 ~日常が輝き始める~

 

会社を辞めるまでの話を最初から読まれる場合はこちらからどうぞ。

一生働くつもりで入った会社を辞めるまで① ~時限爆弾が爆発する~

 

 

ストーリーを最初から読まれる場合はこちらからどうぞ。

鉄道会社で働くことへの憧れ ~将来の夢にどんな絵を描いたか?~

 

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