前回の話はこちら。
独りぼっちの会社説明会 ~色褪せた求人票の呪い~
入社試験で必ず行われるのが面接です。
就職や転職を目指す人は、この面接をどうクリアするかが最大の課題となっていることでしょう。
その中でも専門性のある業界を受ける場合、面接でどんなことが聞かれるのかが分からず困っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、私がJR貨物の面接で聞かれたことを記憶の範囲でまとめてみました。
会社説明会から約1ヵ月後、入社試験を受ける日がやってきました。
今回は一次試験ということで、筆記が主な内容になるそうです。
スーツ姿で再び会社へ行き、今度は出迎えもなく直接社屋へ入りました。
試験に来ていたのた私を含めてわずか5人。
意外に少ないなと思いましたが、他の場所でも他の日でも試験をしているそうなので、これが全てではないことは分かりました。
私たちが受けた入社試験は二十歳以上の人間が応募できる枠で、新入社員の大半を占める高卒組は別枠になっていました。
二十歳以上ということは専門や四大卒か、社会人からの転職になるのでしょう。受験者の中に世代が異なる印象の人はいませんでしたので、おそらくみんな専門卒か四大卒だと思われました。
筆記試験は数学と作文、そしてクレペリン検査の3つが行われました。
数学は中3レベルですので、高校で普通の成績を取れる人なら問題なく解ける難易度でした。
作文は「JR貨物に入りたい理由を800字以内で書け」という内容でした。
クレペリン検査はひたすら足し算を行っていくもので「内田クレペリン」という名前が付いていました。
この日は面接などは無く、高校の中間試験のように粛々と時間が過ぎていきました。
午前中には試験が終わり解散となりました。
帰りは駅の改札まで社員の人が見送りに来てくれて、結果は学校を通じて連絡すると言われました。
それから1週間ほど経った頃でしょうか。学校から電話があり、一次試験は合格との報告がありました。
何の準備もしていなかった私は受かると思っていなかったので正直驚きましたが、この段階に来てようやく、もしかしたら諦めかけていた鉄道会社就職の夢がかなうのではないか・・・と思うようになりました。
二次試験までは数週間あったので、ここからは真面目に準備をすることを決めて、面接のやり方や鉄道会社の二次試験でどんなことを試されるのか?などを調べるようになりました。
二次試験当日。再び会社へ行き、一次試験と同じ会場に入ります。
先日5人だった受験者は一人減って、私を含めて4人になっていました。
人数が少ないためお互いに顔見知りになっていたこともあり、無言の緊張が走ります。
最初の試験は面接でした。
ここは恐らく最も大切な部分なのでしょう。ここで悪い印象が付けば、その後の検査の結果がどんなに良くても落とされてしまうことでしょう。
ノックして部屋へ入ると、3人の男性が長机に横並びになって座っていました。
それぞれの人物の前には、役職と名前が書かれたプレートが置かれていました。
左から安全室長、総務課長、運輸車輛課長と書かれています。
どの人物も国鉄時代からキャリアを積み上げてこられた重鎮に見えました。
面接なんて小学校6年の時に中学受験でやった以降、経験がありませんでした。
短大の専攻科への受験は顔見知りの先生相手でしたので、面接というより面談という感じでしたし、それとは比較にならない別次元の緊張感に頭が真っ白になりそうでした。
今まで以上に緊張するということは、きっとこの会社に入りたいという気持ちが強くなり、真剣になったからだと思います。
面接で何を聞かれたかは緊張のせいかうろ覚えなのですが、記憶の範囲で以下のような質疑応答だったと思います。
Q・この会社をどうやって知ったのか?
A・学校の就職情報室に、1990年代の御社からの求人票が保管されているのを見付けて知りました。
Q・自動車整備の短大に通っているようだけど、どうして鉄道会社なのか?
A・高校時代から鉄道会社への就職には憧れていて、高卒での就職を支援してくれない学校だったので短大へ行き別の進路を考えましたが、情報室で御社の求人票を見た時、もう一度本来の夢を追い掛けたいと思いました。
Q・鉄道の現場は24時間365日動いていて大変だと思うけど、堪えられると思うか?
A・はい。今まで日をまたぐ夜勤を経験したことはありませんが、その環境に身を置き続けることで慣れていけると考えています。
Q・思ってるより大変かもよ~?
A・苦労はするだろうと思っています。実は現在クロネコヤマトの仕分け場でアルバイトをしており夜間作業に従事しておりまして、その仕事を通じてお客様の荷物を扱う仕事の大変さと責任を身をもって感じております。大変な肉体労働ではありますが、逃げ出さずに続けることで慣れることが出来ると知りましたので、御社でもきっとやっていけると思っています。
Q・会社に入ったらどんなことをやってみたい?
A・やはり運転士という仕事をやってみたいと考えておりますが、私が短大で取得した自動車整備の技術が御社のお役に立てるようでしたら、機関区や車両所のような修理の現場でも是非お手伝いしたいと思います。
Q・単語とか知ってて鉄道に詳しいように見えるけど、マニアですか?
A・マニアというわけではありませんが・・・(これは嘘)、御社で働きたいと思ってから色々と調べましたし、会社説明会で担当さんから教えて頂いたこともありますので、人並み以上には鉄道に詳しくなったのかもしれません。
・・・だいたいこんな感じの質疑応答で面接は終わりました。
マニアかどうか聞かれた時は正直焦りました。鉄道会社はマニアを取らないという都市伝説みたいなものを聞いたことがあるからです。
会社によるのでしょうが、実際の現場では鉄道が好きな人の方が真面目に働くという側面はありますし、隠すのは会社に嘘をつくことにもなるので、よくお考えになってこの質問の答えは正直に答えるのがいいと思います。
面接が終わると車に乗って1時間以上移動し、身体検査の会場へ向かうことになりました。
途中昼食にとラーメン屋に寄って頂き、美味しいラーメンをご馳走して頂きました。
学生の感覚で生きてきた上に他社を受けたことがなかった私は、会社ってこういうお金も出してくれるものなのか?かっこいいなと、何故か無駄に感動していました。
身体検査には一般的な健康診断のような検査に加え、脳波検査という特殊な検査も含まれていました。
脳波検査というのは文字通り脳に異常がないかをチェックする検査で、要するに頭がおかしい人は運転士に出来ないので不採用ということになるのだと思います。
頭に大量のセンサーを付けてサボテンみたいな状態になり、真っ暗な部屋で仰向けになってリラックスした状態で検査は行われました。
検査中は出来れば眠って下さいと言われましたが、仰向けになって目を閉じていると突然フラッシュのような光が連続で点滅したりして、しっかり眠れる状態ではありませんでした。
おそらく外部から刺激があった時の脳の反応を見ているのだと思います。
検査は1時間くらい掛かり、かなり入念に行われた印象でした。その後車に乗って1時間かけて戻るので、午前中の面接から始まって丸一日の検査となりました。
解散となった後、今回の試験を受けた私たち4人はお互いに連絡先を交換することにしました。合否の連絡は個別に行きますので、情報交換しようという話になったのです。
この中から誰かが落とされることは間違いないでしょう。そうなれば二度と会えない人も居るでしょうし、少々むごい現実を知ることになるかもしれません。
それでも少人数の受験だったからか、お互いに仲間意識のようなものが生まれていて、みんなが良い結果を得られるようにと励まし合って別れました。
私は専攻科という進路が決まっていたので不合格でもやりたいことはありましたが、ここまで来たのだから受かりたいという気持ちの方が強くなり、気づけば祈るような気持ちで会社からの連絡を待ち続けていたのでした。
この話の続きはこちら。
天国への道? ~夢が叶った人間の心理~
ストーリーを最初から読まれる場合はこちらからどうぞ。
鉄道会社で働くことへの憧れ ~将来の夢にどんな絵を描いたか?~
クレペリンは最初から出来ましたか。
もし練習してできるようになったとかコツなどがありましたら教えてください。
>>1 しんぺいさん
クレペリン検査は当初何を見られるものかわからず、良い評価をしてもらえるような回答は出来ませんでした。
練習の仕方やコツなども私の知る限り存在しますが、この場で回答は出来ませんので、メッセージを頂けましたらお返事させて頂きます。