前回の話はこちら。
会社に入り新人として新しい職場に配属されたら、職場の先輩たちはまっさらな状態で自分を見てくれると思います。
当然第一印象も大切ですが、その後「使える」「使えない」と判断されるのは自分の努力と出した結果次第でしょう。
しかし、配属前から悪評が立ってしまった私たちは、配属初日から既に色眼鏡で見られていることを知りました。
新入社員研修を終えてGW明けになり、配属となった職場に初めての出勤をします。
吉原駅はJR時代に残る貨物駅としては小さな駅で、二階建ての旅客駅舎の一階に詰所が置かれていました。
スーツ姿で出勤し、扉をノックしてから「おはようございます。」と挨拶して中に入ります。
助役さんが出迎えて下さり、「今日からよろしく」と優しい笑顔で返事をしてくれました。
職場には若い先輩が3人と、国鉄時代からお勤めされている年配の方が助役さん含めて6人いました。
先輩方は挨拶こそしてくれましたが、初日ということもあってあまり話はしてくれませんでした。
緊張感のある時間でしたが、この職場に配属となった新入社員は私以外に高卒の同期が一人いて、二人だったので少しは気持ちが楽でした。
午前中は助役さんの案内で駅構内を見学したり、ワム80000の入換作業を眺めて仕事の流れを勉強したりしました。
お昼はちょうど12時台に到着する列車があったので、入換作業に従事する先輩方は交代で昼食を取っていました。
私たちは先輩方全員が食事を終えた後で昼食を取りました。
この日は助役さんが近くのスーパーでお弁当を奢ってくださいました。吉原駅の助役さんは本当に優しい人で、私が吉原駅に在職中に良い想い出を残すことが出来たのは、人格者である助役さんのお心遣いがあったからに他なりません。
昼食中、上から2番目に年配の方が休憩室に入ってきて話しかけてきました。
「新入社員研修は本当は5月一杯までやるって聞いてたんだ。それが急にGW明けに配属って聞かされた。これ以上新入社員研修にお金を掛けられないからって、現場に丸投げされたんだよ。」
薄々感じていたことではありましたが、改めて現実を思い知らされた気分でした。
先輩はさらに続けます。
「本来2か月かけて勉強させることを1ヵ月で終えられる訳がない。お前たちは最低限の知識も得ないまま現場に送り込まれてるから、今年度の新入社員は数は多いけど使えないだろうってどこの職場でも言われてるんだよ。」
そう聞かされました。
つまり現場の人たちから見ても、私たちはすぐに戦力にならず、基礎知識もないので教育にとても手間のかかるお荷物だと最初から思われているということです。
私たちが怠けた訳ではないのに、最初から色々なものを取り上げられ、非常に不利な立場に追いやられたような、やるせない気持ちでした。
研修中に給料の実態も知っていたので、鉄道に興味が無ければ恐らくすぐにでも転職を考えていたのかもしれません。
でもその時の私には今は給料も安くて仕事ぶりに期待されてなくても、運転士になれば挽回できる・・・という気持ちがどこかにありました。
こうして初出勤の日は暮れていき、私は吉原駅の駅員として下積みを行うこととなったのです。
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