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人生で最も自由な47日間 ~いつ死んでも後悔しない経験をする~

前回の話はこちら↓

最後の乗務の日② ~ラストブレーキ~

 

2015年8月13日。JR貨物の運転士として最後の仕事を終えた私。

 

この日をもって機関車のハンドルを握ることは無くなるのですが、JR貨物の社員として在籍しているのは9月30日までとなっていました。

 

つまりこの47日間という長い期間は年休消化という形でお休みを頂く期間であり、私にとっては夢のまた夢と言えるレベルの長い自由時間でもありました。

 

この期間は1日も会社へ行くことなく基本給がもらえるのです。つまり遊んでいてもお金が振り込まれるのであり、人生においてこんなに素晴らしい環境はそうそう用意されるものではありません。

 

最後の乗務を終えた翌日の8月14日は私の誕生日でもあり、この47日間は私にとって人生最大の誕生日プレゼントであると勝手に思っていました。

 

もちろん、その先の人生は不透明で、当面の収入が下がることは見えています。一応まだ社員なので副業禁止ではありますが、不安であればアルバイトしてしまうのも手かもしれません。

 

 

しかし、私はこの47日間を、今後の人生を後悔しないための有意義な時間にしたいと思いました。

 

 

それはどういうことか?

 

もし転職先での仕事に付いていけなかったり、起業に失敗したり、逮捕されて実名報道されて無職前科者に転落するなど、何らかの形で会社を辞めた後の人生が上手くいかなかったとします。

 

そしたら、私はきっとJR貨物の運転士という、憧れ続けた仕事を辞めたことをひどく後悔することになるかもしれません。そんなことではいよいよ目も当てられない悲惨な人生になってしまいます。

 

しかし、もしこの47日間が、JR貨物の運転士という仕事を生涯続けていたら絶対に得られなかった素晴らしい経験に満ちあふれているものだったとしたら?

 

そしたら、その後の人生が上手くいかなくても「あの時会社を辞めたからこそ、あんな素晴らしい経験が出来たんだから」と、きっと割り切ることが出来るだろうと思ったのです。

 

 

つまり、これからの47日間は、その後の私の人生がパーになった時や、事故や病気や事件などで若いうちに人生が終わった時でも、死ぬ間際に後悔しない人間になる。そのための経験を得る時間に費やそうと思ったのです。

 

 

私は総務に電話をし、退職金はいくらあるのかを聞きました。

 

勤続6年半。果たしていくらなのでしょうか?

 

 

総務からの回答は70万円ほどでした。

 

 

この数字が大きいか小さいかは読者の皆さんの立場によると思いますが、私にとっては十分な金額でした。

 

 

私は決めました。

 

 

 

これからの47日間で、退職金は1円残らず使い切る。

 

 

 

将来のことを考えれば、無駄遣いせずに取っておく方が賢明だと思われるかもしれません。

 

しかし私はもう、ただ銀行残高を増やすことだけの人生には全く興味がありませんでした。

 

死ぬような思いをして稼いできた僅かなお金が銀行口座に記帳されていっても、それは自分という人間にとって何の実入りにもなりません。

 

お金というのはただの情報であり、そのお金を使ったことで得られた感情が、初めて自分の実入りになると考えています。

 

 

高額な収入を得ていても、仕事が忙しすぎてそのお金を有意義に使えない人は意外と多いのではないでしょうか。

 

そういう人は高い家を新築したり、高級車を新車で買ったりします。

 

それは確かにすごいことですが、当の本人はその人生にどこまで満足しているのでしょうか?

 

もしかしたら1000万円の高級車を買うことよりも、10万円の予算で1週間仕事から完全に解放され、自由に好きなことが出来る方がその人にとってずっと有意義に感じられるかもしれません。

 

私は当時、自営業で独立ということを考え始めてから、時間を見付けては経営に関する本を読み漁るようになっていました。

 

そして、お金を稼ぐこととは一体なんなのか?ということを自分なりに理解することができ、26歳にしてそのような考えを持つことが出来たのだと思います。

 

 

その結果、私にとって自由時間は、多額のお金以上に価値のあるものであることに気付きました。

 

 

以前の記事で触れたことがありますが、私はスーパーカブに乗って北海道を一周したいという夢がありました。

 

それを実現させるのに必要なお金は、せいぜい15万円程度です。金額で言えば社会人なら誰にでも用意出来るお金です。

 

しかし、その夢を叶えるために必要な時間は、連続した14日間程度。これを手に入れられる社会人は果たして何%ほどいるのでしょうか。

 

少なくとも、JR貨物の社員でいるうちは不可能なことでした。

 

怪我や病気などの理由を除けば、結婚でもすれば手に入ったかもしれません。それすら、私のいた職場では1週間~10日くらいが限界だったと思います。それに結婚してしまったら、その休みは自分の自由時間には使えません。

 

つまり、お金は誰にでも用意出来ますが、まとまった自由時間というのは環境によっては40年先まで手に入らない可能性があり、ではその時間にはどれほどの価値があるかということです。

 

 

私は26歳で退職したことにより、20代のうちに47日間というまとまった自由時間を手に入れることが出来ました。

 

この時間の価値は、退職金に相当する70万円をはるかに上回るものであることは確実で、この時間を有意義に使うためであれば70万円を使い切ることなど何の躊躇も無かったのです。

 

 

私は考えました。今の自分にとって、この時間を使って経験したいことは何か?

 

その結果、3つのことが思いつきました。

 

1・スーパーカブで北海道一周ツーリング

2・どこかの島へ旅行して、綺麗な海でダイビングをする

3・鉄道に乗って、九州から北海道まで日本全国を縦断する旅をする

 

この3つを、この47日間のうちに叶えようと思いました。

 

 

もしこの全てが叶えば、その後の人生がどうなろうと、私は悲観し過ぎずに生きられるだろうと考えたのです。

 

結果的に、その選択は吉と出ました。

 

このときに得た経験が、今のような底辺の人生で生きる自分のメンタルを支えてくれていることに間違いありません。

 

そして今の自分の居場所すら、この経験の中で見出したと言っても過言ではないのかもしれません。

 

 

私は早速計画を練り始めました。この47日間を「人生の夏休み」と称して、最高の経験を得られる時間にしようとプランを作り始めたのです。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

この話の続きはこちら。

全てが自由な旅に出る ~今日は何をしようかな?~

 

 

会社を辞めるまでの話を最初から読まれる場合はこちらからどうぞ。

一生働くつもりで入った会社を辞めるまで① ~時限爆弾が爆発する~

 

ストーリーを最初から読まれる場合はこちらからどうぞ。

鉄道会社で働くことへの憧れ ~将来の夢にどんな絵を描いたか?~

 

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